医師のためのスマホUI/UX改善|離脱に直結する表示速度と視認性

医師のためのスマホUI/UX改善|離脱に直結する表示速度と視認性

医師も診療の合間や移動中のわずかな時間に、手元のスマートフォンで情報を探すことが増えました。
ところが、製薬企業の医師向けサイトは、その多くがパソコンでの閲覧を前提に作られ、スマホでの見やすさが十分に考えられていません。

たとえば、審査済みの添付文書などのPDF資材を、そのまま置いただけのページ。
スマホでPDFを閲覧すると、指で拡大と縮小を繰り返すことになり、医師は読みづらさを感じます。

そこで有効なのが、審査済みの資材のテキストを、スマホで読みやすいHTMLページに載せ替える方法です。
本記事では、スマホ利用を前提としたサイト設計の要件を、製薬ルールを守りながら整理します。

これらの設計がSEOやLLMO(生成AIに引用・推奨されるための対策)の評価にもつながる点は、記事内の補足で簡単に触れます。

パソコン前提のUIが信頼できる製薬情報を医師から遠ざける

製薬企業のWebサイトは、もっとも信頼できる医薬品の情報源のひとつです。
高い信頼性がありながら、スマホでの使いにくさから十分に活用されないのは、非常にもったいないというほかありません。

その理由のひとつは、製薬企業のサイトがスマホでの操作を念頭に置いたUIになっていないからです。
まとまった時間の閲覧はパソコンで問題なくても、その設計のままではスマホ利用時の離脱を招きやすくなります。

医師の情報収集は診療の合間や移動時間に集中する

パソコンが中心という医師もいらっしゃるので、パソコン・スマホ両方の設計を大事にするべきです。
しかし、臨床現場や診療の合間といった限られた時間では、スマホでの情報収集が中心になります。

診療の合間の確認はごく短時間で済ませたいというニーズが強く、必要な情報がすぐに見つかる設計が求められます。
ある調査でも、医師がWebやメールを利用する時間帯は、勤務前後や合間に分散しています。

  • 勤務時間後:21.5%
  • お昼休み:15.2%
  • 休憩時間:13.6%
  • 移動時間:11.1%


参考
Medinew/MDMD2024 Summerレポート(2023年4月〜2024年4月)Medinew(メディクト)

別の調査でも、業務で私用のスマホを使う医師・看護師は60.0%で、その用途の上位にインターネット検索(52.7%)が入っています。


参考
医師・看護師の医療現場におけるスマートフォン利用実態調査(2024年3月)メドコム

時間的な制約があるからこそ、パソコン前提のページは離脱に直結してしまいます。

パソコン基準の画面設計や重いファイルはスマホでの離脱を招く

PDFはデザインやレイアウトといった体裁をそのまま保つ原本として、印刷や保存に適しています。
したがってPDFにも一定の価値があり、医師にとって必要な資材であることは間違いありません。

ただし、スマホで閲覧するときは事情がまったく異なります。
A4サイズの文書をスマホの画面に凝縮することになり、文字や表がほとんど見えないからです。

その結果、医師は指で拡大と縮小を何度も繰り返すことになります。
これは医薬品情報などを素早く取得したいときに大きなストレスです。

また、データサイズが大きくなりやすいPDFは、読み込みにも時間がかかる傾向があります。
知りたい情報にスムーズにたどり着けず、スマホで見る医師の離脱要因になります。

そのため、スマホでの閲覧を前提とした、PDFに頼らないUI設計が必要になります。

現役医師の声

スマホは見づらさや検索のしづらさに加えて、保存して後から見返しにくいのも課題です。診療中に必要なのは資料全体ではなくその一部なので、必要な箇所だけをすぐ保存・整理できると助かります。

診療の合間に読まれるスマホUIの必須要件

臨床現場で本当に求められるスマホ向けUIの要件は、見た目を新しくすることではありません。
製薬業界の制約のなかでも実装でき、医師の利便性を高められる要件を、3点に整理します。

  1. 迷わず届くフラットな導線と押しやすく読みやすいUIを設計する
  2. データを軽くして表示速度を上げる
  3. 審査済みPDFをHTMLに再配置する

1. 迷わず届くフラットな導線と押しやすく読みやすいUIを設計する

スマホ向けUIの基本は、目的の情報まで迷わず届く導線と、指で正確に操作できる画面です。
階層を深くしすぎず、目的の情報までのタップ数を抑えたフラットな導線にします。

リンクやボタンには十分な大きさと間隔を確保し、指での誤タップを防ぎます。
本文の文字サイズも、スマホでそのまま読み取れる大きさにします。

2. データを軽くして表示速度を上げる

BtoCアプリのような華美な装飾やアニメーションを足すだけの刷新は、おすすめできません。
リッチな装飾や重いファイルは、表示速度を下げる要因になるためです。

Googleの調査(モバイルが対象)では、ページの読み込みが1秒から3秒に延びると訪問者が直帰する確率は32%、5秒では90%上昇するとされています。
数秒の遅延も、医師の離脱に直結します。


参考
Find out how you stack up to new industry benchmarks for mobile page speedThink with Google

なお、原典は「直帰率(bounce rate)の増加」ではなく「直帰する確率(probability of bounce)の上昇」です。

3. 審査済みPDFをHTMLに再配置する

スマホ最適化のために、新規コンテンツを作る必要はありません。
製薬業界では新規のライティングがメディカルチェックの負荷を増やし、プロジェクトの停滞を招きやすいためです。

有効なのは、既存の審査済みPDFをHTML化し、ページに再配置する設計です。
たとえば、これまで「トップ→領域→製品→資材一覧→PDF」と何度もクリックが必要だった導線を、製品ページの中に審査済みテキストをHTMLで展開し、スクロールだけで読める形に変えます。

医師はダウンロードを待たずに、目的の情報へそのまま届きます。
審査済みのテキストは一字一句変えず、それを表示するHTMLの構造やレイアウトだけをスマホ向けに作り替えます。

新しく書き起こさないぶん、審査の負担は軽くなるからです。
掲載の進め方を薬事・審査部門と早めに共有しておけば、承認済みの資材を活かしたまま、スムーズにスマホ対応を進められます。

なお、PDFは削除せず原本として残す「併存」が基本です。

UI/UX改善はSEO・LLMOの土台にもなる
本記事の主題はあくまで医師のUI/UXですが、ここで挙げた設計は機械(検索エンジン・生成AI)から見た読み取りやすさにもつながります。
医師にとって使いやすいフラットな導線や速い表示は、Googleのクローラーや生成AIが文脈を読み取りやすい構造と一致します。
表示速度はCore Web Vitals(表示速度や操作性を測る検索エンジンの評価指標)にも関わります。
また、文字が読みやすくボタンが押しやすいスマホ向けの作りは、Googleが評価する「モバイルフレンドリー」(スマホでの見やすさ・使いやすさ)の基準にも合致します。
審査済みPDFのHTML化やナビゲーションのフラット化は、SEOや生成AIの評価(LLMO)の土台にもなります。
診療の合間にスマホで確認するときは、資料全体を読むより、必要な情報だけを短時間で知りたいことが多いです。A4のPDFは文字が小さく、拡大や移動が必要なため、要点をWeb上ですぐ確認できると助かります。

井林 雄太 先生

よくある質問(FAQ)

Q. HCPサイトでスマホ向けのUI設計が重要なのはなぜですか?
A. 医師が情報収集するタイミングが、診療の合間や移動中などのわずかな時間であることが多いからです。スマホの使用が中心になるため、パソコン前提の設計は医師のニーズと噛み合わず離脱を招きやすくなります。
Q. 医師が使いやすいスマホUI/UXの要件は何ですか?
A. 目的の情報に迷わず到達できるフラットな導線や押しやすく読みやすい画面、データの軽量化による表示速度の改善、既存PDFのHTMLへの再配置の3点が軸になります。
Q. PDFをHTML化すると再審査が必要になりますか?
A. 文言を一字一句変えず、HTML内に移し替えるだけであれば、内容を審査し直す負担は大きく抑えられます。承認済みのテキストをそのまま使えるので、ゼロから作る資材のような重いチェックは要りません。掲載の進め方を薬事・審査部門と共有しておけば、承認済みの資材を活かしたまま、スムーズにスマホ対応を進められます。なお、文章の要約や書き換えを伴う場合は、あらためて審査が必要です。

まとめ|スマホ前提の設計が医師の信頼とAI評価を両立させる

パソコンを中心に使っている医師も含めて、臨床現場ではスマホでの情報収集が一般的になりつつあります。
パソコン前提のサイトや重いPDFは、この動きと噛み合わず医師の離脱を招きます。

だからこそ、医師からの信頼を高めるには、スマホのUI/UXの最適化も欠かせません。
迷わず届くフラットな導線、表示速度の改善、審査済みPDFのHTML再配置。

いずれも新規執筆を伴わず、審査済み資材を活かしたまま進められます。
さらに、目的は医師の使いやすさだけではありません。

薬機法やプロモーションコードを守りながら、AI・検索エンジンからの評価も同時に高められるよう、サイトの構造そのものを見直すことが軸になります。
そこで重要になるのが、臨床現場のUXへの理解と製薬特有のガバナンス、そしてLLMO/SEOの技術実装を横断できる体制です。

すなわち、製薬業界に精通し、かつLLMO/SEOに強いパートナーが求められます。
既存資材を活かしながら、多忙な医師のUX向上とAI検索対策を同時に実現する全体リニューアル。

こうした要件を満たす体制のもとで検討することをおすすめします。

監修医
井林 雄太 先生
井林 雄太 先生

一般社団法人
正しい医療知識を広める会
取締役

医師18年目。国立大学医学部卒。日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本内科学会等、複数の専門医資格を保有。現役医師をしながら、総勢2,000名以上の専門医が所属するグループを統括し、現場の医師の意見を反映した医療コンサルティングやコンテンツ監修を数多く手掛ける。医学専門書の執筆からヘルステック企業の事業支援まで、臨床とビジネスの両面で幅広く活動中。

監修医
市川 峰大 先生
市川 峰大 先生
メディカルブランズ株式会社
代表取締役

医療コンテンツを「見る側・使う側・作る側」をすべて経験した医師。医師11年目。腎臓専門医として臨床に従事した後、エムスリー株式会社MADX部門で製薬企業のメディカル戦略支援や事業開発に従事し、医療コンテンツを活用する側を経験。現在は独立し、ヘルステック企業の医療事業や医療コンテンツの企画・プロデュースを行っている。