製薬資材PDFのHTML化|書き換え不要の医師UXとAI検索対策

製薬資材PDFのHTML化|書き換え不要の医師UXとAI検索対策

多忙な医師は診療の合間に、スマートフォンで情報を探すことが少なくありません。
そのとき、医師向けサイト(HCPサイト)の資材がPDF版のみでは、いささか不親切です。

HTML版も用意しておくことで、医師がスマートフォンでも資材の中身を確認しやすくなります。
パソコンで調べる場合であってもHTML版のほうが操作性に優れます。

Googleの調査により、モバイルサイトの表示に3秒以上かかるとユーザーの53%が離脱することが明らかになっています。
表示が1秒から3秒に遅くなるだけで、訪問者が直帰する確率は32%上昇するとの報告もあります。

(数値は「直帰率」ではなく「直帰する確率」の上昇)
読み込みの重いPDFは、サイト離脱を招きかねません。


参考
The need for mobile speedGoogle Ad Manager


参考
Find out how you stack up to new industry benchmarks for mobile page speedThink with Google

一方で、資材を新しく書き直すことは、製薬業界においてハードルが高いという現実があります。
審査(メディカルチェック)を通過済みの添付文書やパンフレットであっても、文言を変えれば再審査が必要になるからです。

本記事では、医師のUXとSEO・LLMO(生成AIやAI検索に引用されるための対策)を改善する資材のHTML化を取り上げます。
審査済みのテキストを一字一句変えずに活かしながら改善する方法について、結論から順に解説します。

PDFのダウンロード数は医師の満足度と一致しない

製薬企業の一般的なKPIとして、「HCPサイトにおけるPDFのダウンロード数」があります。
しかし、PDFダウンロード数は「医師がその情報を快適に活用できたのか?」を示す指標にはなりません。

医師がダウンロードしたPDFを見て、目的の情報までたどり着けたのかは別問題だからです。
臨床現場の行動に目を向けると、PDFは使い勝手の面で不便なことが多いといえます。

以下で、その理由を具体的に見ていきます。

PDFはスマートフォンでの視認性・表示速度に難あり

医師にとってPDFが使いにくいのは、スマートフォンでの閲覧に向かないからです。
多忙な診療の合間、医師はスマートフォンの小さな画面で情報を探すことが少なくありません。

実際、2023年の調査では、医師の約半数がオンラインをメインの情報源とし、50代では6割を超えるとされています。


参考
医師の情報収集方法および製薬企業との関わりに関する調査レポート2023年版(チャネル編)Medinew(メディクト)

スマートフォン中心の情報収集が多くなるほど、どうしてもPDFは不便さが目立ち離脱に直結します。
画面の拡大と縮小を繰り返さなければ読めず、知りたい情報がどこにあるのかを一目で把握できません。

加えて、データサイズが重くて読み込みに時間のかかる点も、スマートフォンで見ているときは情報収集の妨げになります。
スマートフォンにおけるPDFの見づらさ、読み込みの遅さは、医師を離脱させる要因になりかねません。

現役医師の声

スマホでA4サイズのPDFを開くと文字が小さく、必要な箇所を探すのに拡大やページ移動を繰り返します。要点だけでも通常のWebページで確認できると使いやすいです。

紙資材をPDF化しただけではスマートフォンに対応できない

忙しい製薬企業のマーケティング担当者は制作の手間や社内審査の負担を省くため、既存資材をPDFのままWebサイトに掲載することがほとんどです。
PDFなら綺麗なレイアウトのまま閲覧や印刷ができるというメリットもあります。

しかし、紙のパンフレットや製品情報概要をPDF化して並べただけでは、前述の通りスマートフォンで見る医師に負担がかかります。
製薬企業にとっては合理的であっても、医師に不便を強いてしまっている点には注意を払いたいところです。

なお、PDFをページ内に埋め込むツールを導入しても、医師にとって使い勝手はあまり改善しません。
ページを拡大・縮小する負担などは変わらないからです。

スマートフォンとパソコンの違いなどを自動判別して適切な表示ができるように、HTML化が必要です。

HTML資材なら医師が目的の情報に素早くたどり着ける

医師が好むのはデザインの華やかさではなく、目的の情報へ素早くたどり着ける資材です。
この到達スピードの点において、HTMLはPDFに対して明確な強みを持ちます。

HTML版ならページ内検索で必要な情報に一瞬で到達

診療の合間の数秒で目的の情報へ届く導線こそが、医師が求める使い勝手です。
その点、HTMLで作られたページなら、目的の疾患名や副作用の項目といった必要な情報に一瞬でたどり着けます。

スマートフォンの検索機能やパソコンのページ内検索(Ctrl+F:ページ内の語句を探す機能)を活かしやすいからです。
一方、PDFでも検索機能を使えます。

ただし、データとして内蔵されているテキストが見た目のテキストと不一致だったり、レイアウトの関係で崩れていたりしていると、ストレスなく目的の情報に到達できない場合があります。

HTMLのテキストは院内資料や発表用にそのまま再利用できる

医師は、薬剤名や用法用量を院内資料や自分用のメモ、学会発表や専門医申請のサマリーに書き写すことがあります。
この再利用の場面で、HTMLは手入力やコピーできないPDFより扱いやすくなります。

ところが、画像化されたテキストや保護のかかったPDFでは、必要な薬剤名・数値をそのままコピーできません。
テキストを選択できても、2段組のページや表などは見た目通りに抽出できない場合があります。

手入力に頼れば、薬剤名や用量の打ち間違いといった転記ミスのリスクも生じかねません。
その点、HTMLのテキストはそのまま選択してコピーできます。

正確な薬剤名や用量を、院内資料や勉強会の資料、学会発表や専門医申請のサマリーへそのまま写せます。
必要な情報を正確に取り出して再利用できる状態は、医師の資料作成の効率に直結します。

こうした使い勝手こそ、医師に選ばれるWebサイトの条件といえるでしょう。

現役医師の声

コピーできないPDFは、いったんダウンロードして別のソフトでテキストを取り出してから使ったこともあり、正直かなり手間でした。

なお、資材のテキストが「一般名(商品名)」の形で併記されていると、そのまま引用して使いやすくなります。
また、スマートフォンではPDFは保存場所が分からなくなりやすく、必要な一部だけを見返すのも手間です。

HTMLなら必要な箇所だけをすぐに選び直せます。

私はPCで確認することが多く、PDFも保存や印刷には便利です。ただ、必要な箇所を探したり文章を引用したりする際は手間を感じます。要点をWeb上で確認し、必要に応じてPDFを開ける形が使いやすいです。

井林 雄太 先生

HTML化は既存の審査済み資材をそのまま活かせる

医師の使い勝手を高めるHTML化を実現するためには、社内の負担を抑えることが重要です。
既存の審査済み資材を活かすための方針は、以下の2点です。

1.テキストを変えずに審査の負担を抑える

Webサイトの評価を上げる手法としては「文章を要約・リライト」が一般的です。
しかし、製薬業界においてはお勧めできません。

少しでも文言を変えれば、資材の再審査(メディカルチェックのやり直し)が発生するからです。
そのため、審査済みテキストをHTML化する場合も、テキストは一字一句変えず、それを表示するHTMLの構造やレイアウトだけを作り替えることがポイントです。

まずは、すでに審査を通過したPDFのテキストをそのまま抽出します。
そのうえで、テキストを一字一句変えずにHTMLのなかに配置し直します。

文言を変えないので、承認済みの状態を保ったままHTML化でき、審査の負担も大きく抑えられます。
新しく書き起こさず、承認済みのテキストをそのまま入れ替えるので、掲載の進め方を薬事・審査部門と早めに共有しておけば、承認済みの資材を活かしたままスムーズにHTML化を進められます。

2.PDFは原本として残しHTMLを入口にする

PDFのHTML化はすべてを一度に実施せず、段階的に移行しても構いません。
(大規模Webサイトでは一部のページだけ編集することが難しい場合があります)

移行するといっても、PDFを削除する必要はありません。
PDFには印刷といったWeb閲覧以外の用途もあるからです。

PDFとHTMLは役割が異なるため、併存させることが望ましいと考えられます。
そのまま原本としてWebサイトに残し、HTMLを情報への入口にするのが現実的です。

なお、移行するときは、需要が高い資材から優先的にHTML化に着手します。
HTML化した資材を実装した後に効果を測りながら、移行する資材を少しずつ広げていきます。

HTML化はSEOとLLMOにも効く

HTML化の効果は、医師の使い勝手だけにとどまりません。
そのままGoogle検索や生成AI(LLMO)に見つけてもらいやすくなります。

なぜなら、整ったHTMLは人はもちろん機械にとっても読みやすいからです。
医師のUX改善のためのHTML化が、社内で施策の必要性を説明するときの後押しにもなります。

一方で、PDFはGoogleやAIに内容を正しく読み取られない場合があります。
これは見た目と抽出されるテキストが異なるケースがあるためで、HTMLなら不一致は起きません。

よくある質問

Q. 医師向け資材は、PDFとHTMLのどちらで載せるべきですか?
A. HTMLを情報への入口として掲載し、PDFは原本として残す「併存」がおすすめです。医師はスマートフォンで見やすいHTMLを好む一方、PDFは正式な文書として保管・印刷の役割を担うためです。
Q. HTML化すると、資材の再審査(メディカルチェック)は必要ですか?
A. 文言を一字一句変えずにHTMLへ配置するだけであれば、内容を審査し直す負担は大きく抑えられます。承認済みのテキストをそのまま使えるので、ゼロから作る資材のような重いチェックは要りません。掲載の進め方を薬事・審査部門と共有しておけば、承認済みの資材を活かしたまま、スムーズに進められます。なお、文章の要約や書き換えを伴う場合は、あらためて審査が必要です。
Q. 既存のPDFは削除すべきですか?
A. PDFの削除は不要です。(むしろ非推奨)PDFは原本として残しつつ、HTMLページを検索とAIの入口にすることで役割を分けられます。

まとめ|製薬資材はPDFを残しつつHTMLを入口にする

医師向け資材は、PDFだけで完結させるべきではありません。
審査済みテキストをそのまま活かしてHTML化し、HTMLページを情報への入口にすることが望ましいといえます。

HTML化により、医師のUX・SEO・LLMO(AI検索・生成AI対策)を同時に前進させられます。
ただし、薬機法や製薬協プロモーションコードといった業界ルールは厳守しなければなりません。

そのうえで、審査済み資材を活かす設計とAIに正しく認識させる実装を、一貫して提案できる体制が求められます。
表面的なデザインの刷新にとどまらないため、製薬業界に精通し、かつLLMO/SEOに強いパートナーを見つける必要があります。

監修医
井林 雄太 先生
井林 雄太 先生

一般社団法人
正しい医療知識を広める会
取締役

医師18年目。国立大学医学部卒。日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本内科学会等、複数の専門医資格を保有。現役医師をしながら、総勢2,000名以上の専門医が所属するグループを統括し、現場の医師の意見を反映した医療コンサルティングやコンテンツ監修を数多く手掛ける。医学専門書の執筆からヘルステック企業の事業支援まで、臨床とビジネスの両面で幅広く活動中。

監修医
市川 峰大 先生
市川 峰大 先生
メディカルブランズ株式会社
代表取締役

医療コンテンツを「見る側・使う側・作る側」をすべて経験した医師。医師11年目。腎臓専門医として臨床に従事した後、エムスリー株式会社MADX部門で製薬企業のメディカル戦略支援や事業開発に従事し、医療コンテンツを活用する側を経験。現在は独立し、ヘルステック企業の医療事業や医療コンテンツの企画・プロデュースを行っている。