医師会員サイトのUI/UX改善|離脱を招く典型的な3つの設計ミス

医師会員サイトのUI/UX改善|離脱を招く典型的な3つの設計ミス

「新しいコンテンツを量産すればよい」「医師が興味を持つテーマを提供すればよい」と考えていませんか?

HCP会員サイトで医師に使い続けてもらうために重要なのは、コンテンツの量やテーマだけではありません。
多忙な医師が、必要な情報へ迷わず最短でたどり着ける導線と、登録後も自然に利用を続けられる仕組みが必要です。

こうした根本的な課題を解消しないまま動画やコラムを増やしても、利用率の改善にはつながりにくく、メディカルチェックの負担ばかりが膨らんでしまいます。
本記事では、医師がHCP会員サイトから離脱する具体的な理由と、継続利用につなげるUI/UX改善のポイントを解説します。

コンテンツよりも先にログイン機能の改善が重要

会員登録後に利用されなくなると、一見コンテンツの魅力不足が原因のように思えるかもしれません。
しかし実際には、ログインまでの手間が多いことや、ログインして得られる情報・メリットが事前に伝わっていないことも、医師の離脱を招く要因です。

ここでは、多忙な医師の利用を妨げる「過剰なログイン認証」と「ログインする価値の伝わりにくさ」という2つの課題について解説します。

過剰なログイン認証が多忙な医師の離脱を招く

安全性を高めるために設けた複雑なパスワードや頻繁な多要素認証が、医師の利用を妨げることがあります。
必要な情報を少し確認したい場面でも、ログインまでに複数の操作を求められると、多忙な医師はその段階で離脱してしまうかもしれません。

一方、製薬企業のWeb担当者は、IT部門や法務部門からガバナンスとセキュリティの徹底を求められます。
そのため、安全性を優先するあまり、複雑なパスワードの設定や追加認証などが積み重なりやすいのが実情です。

もちろん、ログインの負担を減らすために、認証を単純に省略すればよいわけではありません。
医師をはじめとする医療従事者は、患者情報などの漏洩リスクに高い警戒感を持っています。

実際、医師・看護師を対象とした調査では、業務で私用スマートフォンを利用することに「抵抗がある」と回答した人が67.2%にのぼります。
その主な理由として患者情報などの個人情報漏洩リスクが挙げられました。


参考
医師・看護師の医療現場におけるスマートフォン利用実態調査(2024年3月)メドコム

求められているのは認証を弱めることではなく、必要な安全性を保ちながらログイン時の操作負荷を減らす設計です。

具体的には、端末や利用状況に応じて再認証の頻度を調整する、パスワード再設定までの導線をわかりやすくする、といった改善が考えられます。
Medパスなどの共通IDと連携していても、医師がIDやパスワードを思い出せなければ、ログインを諦めてしまうことになりかねません。

会員サイトを日常的に使い続けてもらえるかどうかは、再訪のしやすさで決まります。
開くたびに認証を求めると離脱されやすくなるため、認証負荷はできるだけ軽くしておきたいところです。

現役医師の声

パスワードはスマートフォンに記憶させていて、自分では覚えていないことも多いです。
久しぶりに開いて再認証を求められると、少し確認したいだけなら別のサイトで済ませてしまいます。
医療系サイトでは、記号を含む複雑なパスワードを求められることが多いうえ、定期的な変更や再設定も発生します。
スマートフォンなど複数の端末に以前のパスワードが保存されていると、どれが最新のものか分からなくなることもあります。

ログイン前に価値が見えないと登録してもらえない

そもそも医師は登録・ログインのメリットが分からなければ、わざわざIDとパスワードを設定しません。
ログインの先にどのような有益な情報があるのかが理解できて、はじめて登録やログインの動機が生まれます。

ただし、プロモーションコードや薬機法にもとづく情報開示の制約は当然守る必要があります。
その制約の範囲内で、医師の検索意図を満たす情報をログイン前に適切に配置する設計が求められます。

現役医師の声

ログイン前に登録すると何が見られるのか分かれば、多少煩雑でもログインしようと思います。
コンテンツの見出しだけでも見えるといいですね。
表や資料の一部をモザイク付きで表示するなどが可能であれば、よりよいかもしれません。

医師の離脱を招くHCPサイトにおける3つの設計ミス

医師が離脱する大きな要因として、目的の資材に速く正確にたどり着けない問題が挙げられます。
医療現場で特にストレスになりやすいサイト設計を、3つご紹介します。

1.資材への到達に3クリック以上かかるような深い階層

HCPサイトで重視されるのは、添付文書やパンフレットといった資材への到達スピードです。
ところが、トップページから資材の入手までに何度もクリックやスクロールが必要な、深い階層構造のサイトが少なくありません。

一般的に、目的の情報まで階層が深いほど離脱は増え、表示速度が遅いほど離脱する確率が上昇します。
Googleの調査では、ページの読み込みが1秒から10秒に延びると、訪問者が直帰する確率が123%上昇するとされています。
(数値は「直帰率」ではなく「直帰する確率」の上昇)


参考
Find out how you stack up to new industry benchmarks for mobile page speedThink with Google

医師は、正確な情報をすぐに確認することを求めており、資材を深い階層に置く構造は、医師が目的の情報に届く前に離れてしまう大きな要因となります。
なお、深い階層の負担を減らす一手として、審査済みの資材をHTMLでページ内に配置し、ダウンロードを介さず読める形にする方法もあります。

2.かえって遠回りになる精度の低いサイト内検索

サイト内検索は、表記揺れ対応やサジェストの整備が万全であれば有効です。
しかし、精度が伴わない場合はかえって離脱を招きかねません。

一般名・製品名・適応症でサイト内検索したとき、表記揺れ(ひらがな・カタカナ・アルファベット)に対応できず、目的のページにたどり着けないことがあります。
また、情報をピンポイントで確認したいにもかかわらず、サイト内検索で関連性の低い講演会資料などが上位に表示されると、かえって目的の情報へたどり着きにくくなります。

実際、製薬企業のトップページやサイト内検索を起点とせず、Google検索から目的のページへ直接アクセスする医師も少なくありません。
サイト内検索で求める情報が見つからなければ、すぐにGoogle検索へ戻り、ほかのサイトを探すこともあります。

だからこそ、サイト内検索の有無以前に、各ページ単体の見つけやすさと分かりやすい情報の並びが重要です。
サイト内検索を設けるなら、目的の一点に絞って返す精度が欠かせません。

3.文字が小さくモバイルで読み取りにくいレイアウト

PC向けに作り込んだ表や小さな文字は、スマホの画面では潰れてしまいます。
指で拡大しても、目的の一行を探すのに時間がかかります。

医師は、診療の合間や移動中にスマートフォンで情報を確認する場面が少なくありません。
ある調査では、業務で私用スマホを使う医師・看護師は60.0%で、その用途の上位にインターネット検索(52.7%)が入っています。

こうした利用場面で、小さすぎる文字やタップしにくいリンクボタンの配置は大きなストレスになります。


参考
医師・看護師の医療現場におけるスマートフォン利用実態調査(2024年3月)メドコム

BtoC(一般の方向け)サイトのような過剰な装飾は不要で、情報を素早く正確に読み取れることを軸にしたモバイル最適化が求められます。
なお、診療の合間に読まれるスマホUIの必須要件としては、データを軽くして表示速度を上げる方法などもあります。

使い続ける決め手は、兎にも角にも、最初に開いたときに「使いやすい」「欲しい情報がすぐ見つかる」と感じるかで決まると思います。
一度使いにくい印象を持つと、次からは検索結果に出ても選ばなくなります。

井林 雄太 先生

目的の情報への到達スピードを高めるポータル設計

医師がHCPサイトに求めるのは、華やかさよりも、必要な情報へ最短でたどり着けることです。
医師の情報収集行動に合わせて導線を整理すれば、検索エンジンや生成AIにも理解されやすいサイトにつながります。

ここでは、3つの観点から、目的の情報への到達スピードを高める方法を解説します。

ログイン前で価値を提示しログイン後へ自然につなぐ

ログイン前のページでその先に何が見られるのかが伝われば、医師は自分の意思でログインします。
そのため、ログイン前のページに疾患情報や製品サマリーの見出しや要点をプレビューとして示します。

詳細なデータや資材に触れる手前で、自然な形でログインを促します。
ログイン前後の境界を感じさせない設計が、登録後の定着につながります。

また、登録後に定着させるポイントは、そのサイトでしか得られない価値の有無です。
講演会のアーカイブや専門医による解説、患者向け資材、専門医試験の対策や学会発表に使える図表など。
こうした、また見に来たくなる独自コンテンツが再訪の動機になります。

あわせて、腎機能別の用量など診療中にすぐ確認したい実務情報をログイン前に見出しで示せると、ログインの動機はより強くなります。

現役医師の声

「講演会を見るならあのサイトが見やすい」「診療の痒いところに手が届くサイト」など、サイトごとの具体的なイメージができると、再訪のきっかけになりますね。

フラットなナビゲーションが医師の離脱を減らす

階層を浅く保つほど目的の情報までのクリックは減り、どこに何があるかを探す心理的な負担も小さくなります。
具体的には、情報の階層を浅く保ち、目的別にカテゴリーを明確に整理していくのが有効です。

これにより医師が直感的にサイトの構造を理解しやすくなり、迷うことなく目的の資材や情報へアクセスできるようになります。
直感的なサイト設計へ改善することが、医師のUX(ユーザー体験)を高めて利用頻度を高める重要な施策です。

UI/UX改善はSEO・LLMOにも効果的
UI/UXの改善は、利用者だけでなく検索エンジンやAIにも意味を持ちます。
フラットなナビゲーション構造は、Googleのクローラーや生成AIが情報の文脈や階層を正しく読み取るための構造と一致するためです。
LLMOの観点でも、階層が浅く意味のつながりが明確な構造は有利に働きます。
つまり、医師にとって使いやすいサイトへの改修は、そのまま機械に対する技術的な最適化、すなわちSEO/LLMO対策に直結するのです。

よくある質問(FAQ)

Q. コンテンツを増やさずに直帰率は下げられますか?
A. 多くの場合で可能です。医師が離れてしまう主因は情報量よりも、目的の資材への到達しにくさやログインの手間にあるためです。階層の浅いナビゲーションと認証負荷の見直しで、改善の余地が大きいといえます。
Q. 直帰率よりエンゲージメント率で見るべきですか?
A. GA4では、直帰率は「エンゲージメント率の裏返し」に定義が変わり、いまはエンゲージメント(サイトが実際に使われたか=一定時間の滞在・複数ページの閲覧・目的の操作など)を主に見ます。会員サイトでも、登録後に使い続けられているかを指標にするのが実態に合います。
Q. 登録した医師にログインして使い続けてもらうには?
A. 必要な安全性を保ったままログインの操作負荷だけを下げること、そしてログイン前にその先にある価値を具体的に示すことが軸になります。
Q. サイト内検索で医師が目的の資材に届くようにするには?
A. まずは表記揺れ(ひらがな・カタカナ・アルファベット)への対応とサジェスト機能の整備が有効です。ただし、精度が伴わないと逆効果になります。知りたいのは一点なのに、関係の薄い講演会資料などが上位に出ると、かえって遠ざかるためです。加えて、医師の多くはサイト内検索よりGoogle検索から目的のページへ直接来るので、各ページ単体の見つけやすさも欠かせません。
Q. UI/UX改善はSEOやAI検索にも効果がありますか?
A. あります。医師が最短で情報に届くフラットな構造は、検索エンジンやAIが文脈と階層を読み取りやすい構造と一致します。使いやすさの改善は、SEOやLLMOの土台づくりにもつながるのです。

まとめ|HCPサイトはゴールまでの導線を最適化して離脱防止

医師会員サイトにおける離脱防止の鍵は、新たなコンテンツの量産ではなく情報への到達導線の最適化にあります。

どれほど有益な医療情報をそろえても、医師が目的の資材に届く前に離脱すれば成果にはなりません。
資材までの深い階層や精度の低い検索機能、モバイルでの視認性の悪さといったUI/UXの課題を解消することが、登録後の定着を左右する大きな要因です。

また、こうした医師のためのUI/UX改善は、Googleや生成AIが情報の階層や文脈を正しく読み取るための構造と一致します。
ただし、この両立を実際に形にするのは簡単ではなく、一般的なWeb制作会社では対応が難しいことが少なくありません。

そこで重要になるのが、臨床現場のUI/UXへの理解や製薬特有のガバナンスを踏まえつつ、LLMO/SEOなどの最新のコード実装まで実現できる制作体制です。
つまり、規制と技術の両面に精通したパートナーの存在が不可欠といえます。

まずは既存の資材を活かしながら、医師のUI/UX向上とAI検索対策を同時に実現し、最短距離で情報にたどり着けるサイト構造への転換から着手することをおすすめします。

監修医
井林 雄太 先生
井林 雄太 先生

一般社団法人
正しい医療知識を広める会
取締役

医師18年目。国立大学医学部卒。日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本内科学会等、複数の専門医資格を保有。現役医師をしながら、総勢2,000名以上の専門医が所属するグループを統括し、現場の医師の意見を反映した医療コンサルティングやコンテンツ監修を数多く手掛ける。医学専門書の執筆からヘルステック企業の事業支援まで、臨床とビジネスの両面で幅広く活動中。

監修医
市川 峰大 先生
市川 峰大 先生
メディカルブランズ株式会社
代表取締役

医療コンテンツを「見る側・使う側・作る側」をすべて経験した医師。医師11年目。腎臓専門医として臨床に従事した後、エムスリー株式会社MADX部門で製薬企業のメディカル戦略支援や事業開発に従事し、医療コンテンツを活用する側を経験。現在は独立し、ヘルステック企業の医療事業や医療コンテンツの企画・プロデュースを行っている。